高のものに熱烈な拍手を送ることでもある。常に共に進み、常に共に励まし、常に相倚り相扶けるといふ精神こそ、新しい団体の精神でなければならぬ。個人主義を批難するものが屡※[#二の字点、1−2−22]団体利己主義の虜となつてゐる今日の現象は甚だ憂ふべきである。
 演劇の部門に於ける新団体の結成も、徐々にその機運をのぞかせてゐるが、演劇人並に演劇関係者の厳しい自己反省から先づ出発しなければならぬ。国運を賭してのこの戦ひに臨んで、演劇は正に一死報国を期して起ち上るべきだ。それはつまり、過去の演劇の「肉体」はここで天に返すといふ覚悟が必要だと思ふ。あまりに比喩的だといふならば、もつと明らさまに云はう。先づ、既成の演劇機構は、それぞれの歴史と功罪とをもつてゐるが、この際、自発的に一応解体して全く新しい発足を企てることが急務である。日本演劇の伝統精神は、かかる解体によつて消滅はしない。却つて、現在の真面目な指導者が、腐敗した機構のなかで、真の演劇精神を生かさうとしてゐる無駄な努力がはぶけるだけである。機構といふものは、条文によつて作られてゐるのではなく、人そのものによつて作られてゐることを忘れてはなら
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