庁予算といふが如き形式でなく、重点的に、重要文化問題の解決に必要な国費を充当する。もちろん、これに伴ふ民間の資力も活用すべきである。
 一方、民間のあらゆる文化職能人は、自主的に先づ専門別の統合団体を結成し、更に、これを横に連結する協力態勢を整へる。専門別の統合団体のみでは、必要な活動はできないのみならず、いはゆる専門割拠主義の弊に陥つて、文化陣営の歩調が揃はぬこと明白である。
 芸術部門だけについて考へれば、文学、美術、音楽、演劇、映画と大別することができるが、この五部門の有機的交流と相互協力の実を挙げるところから、現代日本の芸術維新が生れ、芸術家の文化戦士たる資質が錬磨されるのである。このことを詳述する暇はないが、これは決して、一個人が、文学にも美術にも音楽にも、その他何れにも趣味をもつといふやうなこととは断じて同じでない。
 芸術の制作或は芸術品の普及頒布を業とするものが、自己の利益を擁護するためでなく、真に、戦ふ国民としての自覚と、力強き芸術への愛によつて結びつき、それぞれ専門の領域に於て全能を尽すといふことは、結局、他の専門部門の停頓萎靡を黙視し得ざることであり、また、その最
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