ふかも知れぬが、常に有機的な関連をもつばかりでなく、現実に、如何なる文化部門の職域機構も、政治の対象とならないものはなく、また経済活動を営まないものはないのである。これは相互に同じことが云へるのであつて、例へば経済面から貯蓄運動といふものが考へられる。この運動は国民精神の昂揚に俟たねばならぬ。そればかりではない。消費生活の技術的工夫によつて一層効果を挙げ得るであらう。従つて、娯楽とか休養とか、身嗜みとか知識の涵養とかいふ問題を無視することはできぬ。否寧ろさういふ点が解決されなければ、絶対に永続的な貯金運動は不可能である。さうなると、貯金運動は先づ文化運動の形で進められるのが最も適当だといふことになる。わざと逆説を弄するわけではない。政治や経済を文化から引離さうとする指導者たちの注意を喚起するために、「文化」といふものの「在り方」を説明したまでである。
 そこで、文化機構の整備統制は、先づ、少くとも、文化機構の全貌を把握し、これを一元的に企画運営し得る政治機関を必要とする。政治機関なるが故に、行政機関の如く、自己の所管に没頭することなく、十分に、戦局の推移と国内経済の事情を考慮に入れ、官
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