ふものは、いろいろな要素から成つてをり、様々な形で現はれて来るものである。戦争に勝つことは、むろん国力の強大を意味するけれども、同じ勝ち方にもいろいろある。有効に、確実に、そしてきれいに勝たなければ、ほんたうに勝つたとは云へないのである。これが日本の目指す勝利であり、この勝利なくしては、日本の理想に到達することの困難であることを、われわれは肝に銘じてゐるのである。
 総力戦の意味は、軍事力と並行して国家活動のあらゆる分野、国民生活の全領域を、かかる「立派な勝利」の獲得に向つて、整備動員することであり、そのためには、これに応ずる国内の秩序と組織とが当然必要とされるのである。政治、経済、文化といふ風に、誰が分けたかは知らぬが、いはゆる新体制の呼び声とともに、かういふ国内機構の区分法が公に採用せられ、文化機構なるものが、危く政治と経済の両面から遮断せられようとした。現実の問題としてはさうはいかぬが、観念的に別個のものとされたところに、新体制運動の不統一性がその出発点に於てすでにあつたと云へる。
 文化機構は決して政治や経済の機構と別々に存在するものではなく、その間、専門的にみれば一応看板は違
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