の利権の擁護を動機として生れたものであつて、ある意味では旧来の「政治」と対立するが、また一方、興行者及び俳優の横暴から劇作家を救ふ点に於て、政府の理解と支持の上に成立つてゐる。
劇作家組合の規約は、別に法的根拠を有するわけではない。しかし、組合の強力な場合は、殆どこれに匹敵する効力を生んでゐる。例へば、ある劇場が特別な関係を理由として或る特定の作家の脚本のみを上演する場合、組合はそれに抗議して他の作家の作品をも上演することを強要できたり、俳優及び興行者の動もすれば戯曲の文学的価値を無視せんとする傾向に対し、作家は稽古の最後に臨んで若し自己の意に満たざるものある時は、初日を延期する権利を主張したりしてゐるところもある。
文芸政策と関連をもつ演劇取締の手段として、脚本検閲の問題を見逃すわけに行かぬ。上演脚本の検閲と文学的出版物の検閲とは、その間自ら検閲の標準に手心が加へられることは何処でも同じである。根本の方針は、飽くまでも一貫したものでなければならず、これを行政的に如何に処理するかは、国情によつて、といふよりも寧ろ、その国の芸術政策が何人によつて樹てられるかにより、様々な工夫の跡が見
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