みろ、こら。ホヽホヽホケキヨ。ホヽヽヽホケキヨ。かういふ風に鳴いてみな。駄目だ、こいつはまだ学校へ行つてねえや。

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そこで、鶯のことは忘れたやうに、また寝ころがつてゐる。
しばらくすると、鴬は、巧みな声で、一と声鳴いてみせる。
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飛田  おや、今頃鳴いたな。学校へ行かないつて云はれて、むつとしたな。よしよし、もうそれでいゝ。あんまり鳴くと、今度は、商売人上りだつて云はれるぞ。

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鶯は、また、一と声、続いて二た声、三声、鳴き続ける。
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飛田  よし、わかつた、わかつた。いゝ喉だよ、お前は。おれは、今、折角家の中にゐるんだ。梅林ん中を歩いてるやうな気持にさせてくれるな。

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鶯は、なほ鳴き止まない。
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飛田  よせつたら、よさないか。聴きたくないときは、ガリクルチでも聴きたくないんだ。ぢや、もう、出てつてくれ
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