んでをりました、はい。」
お前は知つてゐるな、おれがあの連中と茶を飲んだことを。
庭の芝生で子供らと遊ぶ。
お前たちに、かういふことができるか。をぢさんはできる。いゝか、見ておいで。
逆立をして見せる。
わたしは山が好きだらうか。疲れずに登れる山なら好きだ。
わたしは水が好きだらうか。音を立てない水なら好きだ。
何よりもわたしは、深い森が好きだ――虫さへゐなければ。
カレルセエ
葵色《モオヴ》の山壁、紺青の湖、それを縁どる黒猫の背に似た樅《もみ》の林。
行かう、行かう、おれはあんまり見すぼらしい。
メンデルパツス
運転手、気をつけてくれ、おれの生命《いのち》はお前の掌中にあるんだ。
なに、おれだけ殺すことは出来ないと云ふのか。
静かに、静かに……お前と死んでなんとせうぞ。
コルチナ
雪が降るまで咲きつゞけると云ふ牧場の泊夫藍《さふらん》、お前は笑つてゐるのか、それとも、夢を見てゐるのか。
白楊樹《ぽぷら》が伸びをしてゐる。
エリザ、珈琲をもつと熱くして来てくれ。
――いよいよお別れですね……奥さん。一度あなたのお眼を拝見……そのヴェ
前へ
次へ
全7ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング