ールをどけて……。
ドロミッテン
山、山、山、山、もう八時間、山の中を走つてゐる。羚羊《かもしか》の足跡を見た。樵夫《きこり》の歌を聞いた。
山の精にはどうして遇はなかつたらう。
再びボルツァノ
や、アウフガンク、帽子の緑色が、いつの間にか赤くなつてゐるな。いつお嫁さんを貰つた?
アルト・ボルツァノ
××××夫人の山荘は固く鎖されてゐる。
羊飼は云ふ――××××夫人は、若い愛人の為めに、「|我が息ひの家《ヴイラ・モン・ルポオ》」を売り払つたと。
××××夫人の山荘は、固く鎖されてゐる。
嵐の一夜。――木の葉が月の光の中に舞ふ。
再びヴェロナ
いくど見ても、なんの感激もおこらないローマ闘技場の廃墟。
人が、また、ぢろぢろ顔を見る。
底本:「岸田國士全集19」岩波書店
1989(平成元)年12月8日発行
底本の親本:「言葉言葉言葉」改造社
1926(大正15)年6月20日発行
初出:「女性 第六巻第一号」
1924(大正13)年7月1日発行
入力:tatsuki
校正:Juki
2005年11月23日作成
青空文庫作成フ
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