はつて、はじめて目立つた効果を収め得るものであるといふ証拠になると思ふ。
知識階級の求める現代劇
劇場経営は、もともと企業として、若干の危険率を含むものであるから、たとへ純営利的な立場から考へても、多少の道楽気を必要とするらしい。従つて、その危険率を最も少くするためには、なんとしても、一般大衆の趣味に迎合しないわけに行かず、一般大衆の趣味に最も近い趣味の所有者が興行者として、先づ先づ成功するといふ理窟なのである。
ところが、西洋諸国に於ては、さういふ興行者にも、幾つかの階梯があり、それぞれの劇場群は、それぞれのほぼ固定した観客層をもつてゐるのである。つまり、劇場が各々の「程度」と「色彩」によつて、これを撰択し支持する「顧客」を専有し、その範囲内に於て、一つの目標が与へられてゐる。しかも、一般大衆は、自分達の目指す卑俗な興行物に吸ひ寄せられる一方、個人としては、時に背伸びをしながら、所謂「上等(シイク)な」劇場に足を向けることを自慢にする傾向がある。
ところが、現在わが国に於ては「上等な劇場」といへば、「場代の高い劇場」の謂であり、必ずしも、「程度の高い」ことを意味せ
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