――(夢みるやうな徹笑)さうか知ら。


或る日曜の午後

 ――ジヤン、あたしも連れて行つて。
 ――駄目だよ、お前なんか……すぐ泣いちまふから……。
 ――今日はきつと泣かない。うそだつたら百度接吻してあげるわ。
 ――いらないやい、そんなもの。来るんぢやないよ。アンリエツト。今日は男の子ばかりで遊ぶんだから……。
 ――男の子ばかり……つまらないぢやないの、女の子も、一人ぐらゐゐなくつちや……。


庭の一隅にて

 ――まあ、お嬢さまがた、こゝにいらしつたんで御座いますか。あの、奥様がお召しでいらつしやいます。
 ――だあれ、来てるのは。
 ――だれつて、訊かなくつてもわかつてるぢやないの。
 ――御存じなんでございませう。
 ――姉さん、行つてらつしやいよ、姉さんに用があるんだから……。
 ――うそばつかし……。いや、あんたも来なくつちや。
 ――あたしはいや。
 ――ぢや、行かない。
 ――もうお帰りになるところで御座いますよ。
 ――姉さんは行かないのね。そんなら、あたしが行くわ。


商館の売場にて

 ――Bちやん、いゝわね、一寸、あのスタイル。
 ――誰かさんに似
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