ばならぬと考へてゐる。これは人のことでなくて、自分自身の問題であるから、批評としてでなく、実行として何等かの覚悟が必要である。
そこでまづ手始めに
僕は現在の周囲から、「憂を倶にする」人々をピック・アップして、一種の「演劇クラブ」を作り、あはよくば一つの「新運動」を起したいと思ふ。
そして、それは当分、極めて小規模に、且つ極めて気永にやつて行くつもりである。
そのグルウプは、作家、俳優、演出家、及び、純然たる素人から成るものであつて、何れも「語られる言葉の美」に関心をもち、「物言ふ術」の具体的研究に興味と野心を有する人々に限られる。
会合は月に一回の予定であるが、会員は総て「言葉の俳優」たる資格試験をパスしなければならず、例会には、交互に、「その研究」を発表する権利と義務を負ふものである。
事、芝居に関しては、仏頂面と四角四面は禁物である。但し、礼節の範囲に於て批評の自由は保たれ、一座を白けさせない程度に「天狗」たることは妨げない。そこでは、羞恥は美徳にあらず、アヴンチュウルは犯罪と見做されるであらう。
既に若干の申込者がある。何れも年齢二十より五十歳までの紳
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