なんとかせねばならぬ
岸田國士

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)前衛劇《アヴァンギャルト》

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 僕はこの十年以来、芝居についての意見又は感想を書きつづけて来た。
 十年前と今日とでは、局部的には可なり事情が変つてゐるやうだが、劇壇全般の空気といふものは、依然、僕の「健康」には適しないもののやうである。
 僕の望んでゐることは、せめて、自分の周囲に、純粋な「演劇的雰囲気」を感じたいといふことで、そのために、重複を厭はず、同じことを幾度も繰り返し、少しでもその反響が現はれるのを待つてゐた。
 幸に、近頃になつて、本誌(「劇作」)に拠る若い友人諸君が、期せずして僕の目標とするものを目標とし、創作や評論の上で、着々有意義な仕事を見せてくれはじめた。
 ところが、芝居の社会といふものはどこの国でも同じだと見え、なかなか「本質的」な努力が一般の注目を惹かず、本誌の如きも、僕などが考へてゐたよりも、売れる部数が少いらしいのを知つて、甚だ心外に思ふのである。

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