直して来よう。

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二人は彼女に会釈して退場。
彼、ナイフとフオークを投げ出して不愉快さうにその後を見送る。
彼女、素早く、疳癪玉の鑵を持つて来て、彼の方に差出す。
彼はその中から、一つを取り上げ床の上へ叩きつける。爆音。また叩きつける。爆音。
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彼  あんな話をされて、君はなぜ黙つてるんだ。(また叩きつける。爆音。)
彼女  どんな話……?
彼  バアを開けなんていふ話さ。
彼女  あたし、面白いと思つて聴いてたわ。
彼  (また叩きつけ)なにが面白い!
彼女  (これも、すぐに鑵の中に手を入れ)面白いぢやないの!(叩きつける、爆音。)
彼  世間の奴らは、おれを馬鹿にしてる!(叩きつける、爆音。)
彼女  あんたのひがみよ。あたしが働いちや、どうしていけないの? こなひだうちから、さういつてるでせう。一緒に外へ出て働きませうつて……。それを、あんたが許してくれなかつたんだわ。どうしてなの? 女に稼がせちや、男の顔にかゝはるとでも思つてんの。そんな馬鹿なことつてないわ。
被  おれは、君に働
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