かんしやく玉
岸田國士
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)清々《せいせい》する
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
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彼女
隣の女
多田
彼
小森
阿部
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アパアトとは名ばかりの、粗末な貸室。左の隅にダブルベツド。右に炊事場に通ずるドア。正面に旧式のシンガアミシン。
三月のなかば。午後四時ごろ。
彼女は、ミシンの手をやめ、縫ひかけのローブを両手で胸にあてがひ、鏡の前に立つ。
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彼女 (独り)なかなかいゝぢやないの。カーテンのお古だなんて見えやしないわ。
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ドアをノツクする音。彼女は、黙つてドアを開けに行く。隣の女がバナナをたべながらはひつて来る。
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隣の女 このいゝお天気にお留守番なの?
彼女 あなたこそ珍らしいわね、今ごろ、家にゐるなんて…
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