ることは確かであつても、正體はまだ判明しない。一時は球形であるなどと考へたこともあるが、あながちさうでもない。また電離状態にあるときは、電子が店から外へ飛び出すことがある。普通状況では、店内にある電子の數は決定してゐる。化學作用はこれらの電子が他の商店の電子と結託する作用で起るが、この作用を受くる店の配列は異なつて來るは當然である。
 かくして店の状況はほゞ觀察せらるゝが、今度最も注目すべきは、商店の中央に備へ付けてある金庫の内容である。段々考究して見ると、この金庫即ち原子核は、水素原子、アルファ粒子と電子とが集合してゐる。金庫内に陳列されてある模樣は不明であるけれども、水素原子を單位としてはかれば、その貫目は若干、電子はあるかゞ判然してゐるのみならず、金庫外の商品に相當する電子が、幾何あるかも推定される。かくして元素は水素を一として、一つづゝ順上りになつて、九十二あることが判つた。
 しかして順位は電子單位で計算して、核の荷電に相當する數である。金庫内の價値は極つてゐるが、まだその蓋を開けて、中身を調べた人はない。何れ六ヶ敷い鍵がなければ、點檢することはできまい。吾人は水素原子核や電
前へ 次へ
全11ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長岡 半太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング