うにゐたAが真打《しんうち》と云つたやうな格で、更に判決でも下すやうに、頤《あご》の先を突き出し乍ら鋭くかう云ひ出した。
「僕もいつかつから、君に云はう/\と思つてゐたんだが、君はあんな生活をしてゐて、ほんとにどうする積《つも》りなんだい。君があゝしてあの連中と一緒に、下らない遊びに耽《ふけ》つてゐればゐる程、僕らは君と遠ざからなくちやならない事になるよ。君はそれでいゝ積りなのかい。」
「仕方がないね。僕のほんとの気持が解つてゐて呉れる筈《はず》の、君らが離れると云ふんなら、僕は仕方がないと思ふよ。――そしていづれ時が来て、僕のほんとの気持が解つたら、又もとへ戻る事もあるだらうから。」
 私はそれを聞くと、満腔《まんかう》の反感を抑へて、取《と》り敢《あ》へずかう答へた。それは私の精一ぱいの強気であつた。私はAがあゝ云つた言葉の中に、『俺に交際《つきあ》つてゐないと損だぞ。』といふやうな、友情の脅威が自ら含まつてゐるのを、何よりも癪《しやく》に障《さは》つて聞き取つたのだつた。
「それなら僕も仕方がないね。――併し、僕は何も君のために良友ぶつて忠告するんぢやないんだよ。僕らのために、い
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