速なアメリカの表を有っているならば、年出生の年結婚に対する比率が四対一以下なることを見ることであろう1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。
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『1)[#「1)」は縦中横] 「合衆国における生命蓋然率に関する諸観察」と題する、バアトン氏の手になる「フィラデルフィア協会会報」にある一文(Vol. iii. No. vii. p. 25.)から見ると、私がここに述べた蓋然率は違っていないとも限らない。もし実際、バアトン氏の計算が、合衆国全般について真と考え得るならば、産児の半数は一三または一四歳以下で死亡することとなり、従って産児の半数は結婚まで生存し得ないであろう。しかし事実は、バアトン氏の計算は、国全般に適用しているけれども、フィラデルフィア市とその他確かに健康状態のよくない一、二の町や村から得てきたものなのである。我ヨオロッパの最大諸都市は、云うまでもなく、産児の半数が一二・五歳以下で死亡するというフィラデルフィアほどには、健康状態がよくないが、しかし我が中級都市の多くは遥かにこれより健康的である。フィラデルフィアで四五分の一、サレムで四七分の一という、バアトン氏の死亡率の計算は、確かに彼れの他の見積りと矛盾するものであり、従って短期間につき、しかも伝染病流行の年を除外して、採ったものでなければそうはならない。実際、彼はこの種の除外を行ったことを一、二の場合で認めており、従って彼れの計算は信頼し得ないものである。彼は一結婚当りの出生は六・五と述べているが、しかし彼が与えている数字の方は四・五でしかない。そして後者が一結婚当りの子供の正しい比率であると仮定し、またもし同時に産児の半数は一四歳以下で死亡すると仮定するならば、一切のアメリカの人口増加は不可能であろう。全体として、吾々はこの一文にある計算は合衆国全般には適用し得るとは考え得ず、産児の半数が、またヨオロッパの如くに二五歳、三〇歳、またはそれ以上まで生存することなく、一四歳以下で死亡するとも考え得ないが、しかしもし、それが青春期未満の大きな死亡率を意味するとしたら、アメリカで確実に進行中の急速な人口増加を説明するためには、各結婚当りの出生は七ないし八の多きに上るものと、考えなければならない。フランクリン博士は、アメリカでは一結婚当りの出生は八で、産児の半数は結婚まで生存すると想像しているが、これがおそらく真に近いであろう。Miscell. p. 3.(訳註――バアトンに関する評言は第三版以下では前章で行われている。二三七頁以下参照。)
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『これに反し、出生の死亡に対する比率が一三対一〇であり従って人口増加が急速でないシベリアでは、年出生の年結婚に対する比率は四・一対一、すなわち四一対一〇である1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。またフランスでは、人口増加はシベリアよりも緩慢であるけれども、この比率は、革命前には、四・五対一であった。コルシカでは、その人口はおそらく継続的に急速な増加を示しているとは云い得ないが、出生は結婚に対し五対一であると云われている。ノルウェイにおける出生の死亡に対する比率はスウェーデンよりも大であるが、年出生の年結婚に対する比率は、ノルウェイでは三八対一〇、スウェーデンでは四一対一〇である。
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『1)[#「1)」は縦中横] Sussmilch, id. table xx. p. 81.
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『従って年出生の年結婚に対する比率が四対一以下の場合は一国の人口は危殆な状態にある、とは云い得ない。これに反しかかる比率は人口増加に好都合であり、そして人口増加の極めて急速な多数の国に存在していることがわかっている。四対一以上の比率は、それ自身としては、人口増加にとり都合が悪く、ある国では結婚の出産性が異常に高いために時にこの比率を示しながら人口が増加していることがあるが、しかし一般には、人口増加の緩慢な国に見られる率である。
『私はあらゆる機会をとらえてこの問題を例証しようと思うのであるが、それはけだしかくも多数の立派な著者が、各結婚がその継続期間中に産む子供の数を、年出生の年結婚に対する比率で測定するという誤りに、陥っているからであり、そして私は、かかる多数の権威者の一致した見解と私が意見を異にする十分な理由を、読者に納得させたいからである。これらの著者はいずれも、彼らが利用する表の与える結果を見て、驚きの意を表わしている。なかんずくジュウスミルヒ及びクロオメは、一結婚当り四ないし四・五の子供という平均は、その多くは一二人以上の子供を産む特定女子の出産性について吾々の有つ経験に反する――もっともこの子供の多くは養育中に死亡するかもしれぬが――と云っている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。そしてワルゲンティンは、北部地方の婦人の出産性が高いという有名な事実との関連で、この数字の低いことを指摘しているのである2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。
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『1)[#「1)」は縦中横] 〔Go:ttliche Ordnung, vol. i. c. v. s. lxxxiii. p. 169. Crome, p. 91.〕
『2)[#「2)」は縦中横] Sussmilche, vol. i. c. v. s. lxxxv. p. 173.
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『私は、プライス博士や、その他ほとんどすべての政治算術家が、人口原理を全く誤解したのは、結婚の出産性の測定法に関するこの誤りに主として由来するものと、確信せざるを得ない。もし実際この計算法が正しいならば、人口減退の恐怖には実際十分の根拠があるということになろう。
『ある国の表から、年出生の年結婚に対する比率が四対一以上であり、換言すれば、先に樹立した原則によって産児の半数以下しか結婚まで生存しない場合に、この結果が、青春期以下の多数のものが未婚で死亡する――予防的妨げの作用――によって生ずるのか、または子供の高い死亡率――積極的妨げの作用――によって生ずるのかは、かかる比率だけからは決定し得ない。しかし死亡と出生の比率は、一般に、そのいずれであるかを確証するであろう。プロシアでは、それは疑いもなく主として子供の死亡率によって生じたものである。そして各結婚当りに極めて多数の子供が生れる場合には、食物不足はなくとも十分な注意の不足によって多くのものが死亡するということは、ありそうなことと思われる。私は、下層階級の婦人が極めて早婚をする時には、彼らがもっと晩婚し、子供の数が少いので従ってもっと行届いた世話をすることが出来る場合に比較して、啻に子供の数が多いばかりでなく、またその多数を失うということは、一般に認めなければならぬことと思う。ジュウスミルヒが与えている表から見ると、プロシアでは、この期間中に、産児の半数は二四歳以下で死亡したことがわかる1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。そして産児の半数近くが結婚まで生存したから、結婚は早婚であったはずであり、そして予防的妨げは多くは働き得なかったであろう。
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『1)[#「1)」は縦中横] Id. vol. iii. tab. xxi. p. 29.
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『スウェーデンでは、産児の半数は三三歳まで生存し1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、そして約半数またはそれ以下が結婚まで生存するから、予防的妨げは、なお著しい程度にというわけにはいかないが、プロシアより遥かに多く、作用しているであろう。産児の中《うち》これより低い比率が結婚まで生存するフランスでは、予防的妨げの作用はおそらくスウェーデンの有様と余り違わないであろう、――もっとも、私は確かにこれよりやや低いと考えるが。ネッケルによれば2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]フランスにおける結婚の人口に対する比率は一対一一三・三分の一である。
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『1)[#「1)」は縦中横] Price's Observ. on Revers. Paym. tab. xliii. p. 132.
『2)[#「2)」は縦中横] De l'Administration[#「l'Administration」は底本では「l'Administratian」] des Finances, tom. i. c. ix. p. 255. 12mo. 1785.
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『予防的妨げの作用は、総人口が年結婚に対してとる比率で測定するのが最もよい1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。そしてこの比率は、各年結婚当りの年出生数に、各年出生当りの人口数を乗ずれば、得られるけれども、しかし、産児の半数以下が結婚まで生存するからそれは低く、または産児の半数以上が結婚まで生存するから高い、ということにはならない。プロシア領のうち表に含まれている地方では、そこに出ている期間内で、産児の半数以下しか結婚まで生存しなかったが、しかも年結婚の総人口に対する比率は一対九二というように高かった2)[#「2)」は縦中横、行右小書き、底本では「1)」]。産児の半数以上が結婚まで生存するノルウェイでは、年結婚の総人口に対する比率は一対一三〇というように低い。その理由は、人口の年出生に対する比率、すなわち乗数が、これら二つの場合において著しく異るからである。
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『1)[#「1)」は縦中横] この測尺によっても、それから得られる推定は全く信頼がおけるというわけではない。けだしそれは、結婚の出産性や、青春期未満の人口の比率によって、影響を蒙る可能性があるからである。もし一国で行われる一切の結婚が、少数であろうと多数であろうと、早婚であり、従って多産的であるならば、同一の出生率を生ずるためにより[#「より」に傍点]低い結婚率でよいことは明かであり、または同一の結婚率をもってより[#「より」に傍点]高い出生率が生ずるであろう。この後者の場合は、結婚率はスウェーデンとほとんど同一またはやや以下であるが、出生及び死亡はこれより高いフランスに、当てはめ得るように思われる。そして比較される二国において、その一方が他方よりも、青春期未満の人口の比率が遥かに高い場合には、年結婚の総人口に対する一般比率は、結婚適齢者における予防的妨げの作用の同一なることを決して示しはしないであろう。記録簿の中で、予防的妨げが地方よりも都市において作用することが少いような形を示させるものは、実は一部分は、都市では青春期未満の人口の比率が低いという事実と、外来者の流入となのである。実に結婚適齢の未婚者が最大なのは都市であることには、ほとんど疑いはあり得ない。だから予防的妨げは都市においてより[#「より」に傍点]多く作用しているのであり、従って人口の半数以上が十五歳以下のアメリカの如き国においては、年結婚の総人口に対する比率は、予防的妨げがいかに実際働いていないかということを、正確に表現しないであろう。この問題は複雑であり、やや注意を要するものである。
『2)[#「2)」は縦中横] 〔Sussmilch, Go:ttliche Ordnung, vol. i. c. iv. s. lxxi. p. 141.〕
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『ノルウェイでは、おそらく、産児の半数は四十三歳、四十四歳、またはそれ以上まで生存するのであろう。従って、産児のやや半数以上が結婚まで生存するけれども、二〇歳ないし四四歳の者が必ずや数多く未婚生活をしているのであり、換言すれば予防的妨げが著しい程度に行われているのであろう。スイスのヴォー州の一部では、産児の半数は四五歳までも生存する。従ってもし四〇歳までは誰も結婚せず四〇歳になれば全部が結婚するとすれば、産児の半数以上は結婚まで生存するであろうが、しかし全部が四〇歳以下には未婚なのであるから、予防的妨げは非常に著しい程度に行われていると云い得よう。
『従って、産児のう
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