フ大きな相違を生ずる上に、一部分与って力あることであろう。』)
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 以上の事例によって、記録簿により、結婚の出産性及び結婚まで生存する産児の比率を断定するために、前に設けた法則をどのように適用すべきかが、十分にわかるであろう。しかもなお、それは単に近似たるに過ぎず、正確なりとして信頼し得る諸結果を得るというよりはむしろ外見的困難を説明する目的をもつものに外ならないことを、忘れてはならない(訳註)。
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〔訳註〕後半の『しかもなお』以下は、第六版のみに現わる。
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 再婚及び三婚についての修正がいかに重大な意義を有するかを考えなければならぬ。各結婚当りの出生を四とし、出生と死亡とが同数であると仮定すれば、一見したところ、かかる結果を生ずるためには、産児の正確に半数が結婚まで生存することが必要であると思われるであろう。しかしもし、再婚及び三婚を考えて六分の一を結婚から控除し、これを死亡数と比較するならば、比率は一対四・五分の四となるであろう。そして結婚まで生存する子供は半数ではなく四・五分の四の中《うち》の二だけあればよいということがわかる。同一の原則に基づいて、もし出生が結婚に対し四対一であり、産児の正確に半数が結婚まで生存するとすれば、人口は一見したところ停止的であると思われるかもしれないが、しかしもし結婚から六分の一を控除し、そして死亡の結婚に対する比率を四対一となるものとすると、吾々は、記録簿における死亡を結婚と比較すれば三・三分の一対一、出生は死亡に対して四対三・三分の一、すなわち一二対一〇――これはかなり急速な増加率である――なることを見るのである。
 更にまた、鰥夫の再婚数は寡婦のそれよりも遥かに多いのであるから、もし結婚まで生存する男子の比率を知りたければ、吾々は結婚から六分の一ではなくたっぷり五分の一を控除しなければならぬということを、注意しなければならぬ1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。この修正に従えば、もし各結婚当りの出生が四であるとすれば、人口を維持するためには、五人のうちわずか二人の男児が結婚まで生存するだけで足り、また各結婚当りの出生が五であるとすれば、この目的のためには、三分の一以下で足りるであろう。他の計算についても同様である。結婚まで生存する男子の比率を測定するに当っては、男子の出生率がより[#「より」に傍点]高いことも若干斟酌しなければならない(訳註1)。
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 1)[#「1)」は縦中横] ポメラニアの結婚二八、四七三のうち、五、九六四の男子は鰥夫であった。Sussmilch, vol. i. tables, p. 98. またブッシングによれば、プロシア及びシレジアの結婚一四、七五九のうち、三、〇七一の男子は鰥夫であった。Sussmilch, vol. iii. tables, p. 95. ミウレは男子一〇〇が一般に女子一一〇と結婚すると計算している。〔Me'moires par la Socie'te' Economique de Berne. Anne'e 1766, premie`re partie, p. 30.〕(訳註――この註は第四版より現わる。)
〔訳註1〕このパラグラフ全部は第四版より現わる。
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 死亡以上に出ずる出生の超過を生み出すには三つの原因が働いているように思われる。すなわち、第一に、結婚の出産性、第二に、産児のうち結婚まで生存するものの比率、第三に、平均寿命と比較してのこれら結婚の年齢の若さ、すなわち、死亡による世代の推移に比較しての、結婚及び出生による世代の短かさである。プライス博士はこの最後の原因を考慮から逸したように思われる。けだし彼は、極めて正しくも、生産性が同一と仮定すれば、増加率は結婚の奨励と産児の平均寿命とに依存する、と云っているけれども、しかもこれを説明するに当って、彼は、平均寿命の増大は単に成人して結婚するものの数の増加に影響を及ぼすに過ぎぬものの如く考え、これに加うるに、結婚年齢と死亡年齢との間隔にも影響を及ぼすものなることを考えていないように思われるからである。しかしもし何らかの増加原則が存在するならば、換言すれば、もし現世代の一結婚は次世代の一以上の結婚を――再婚及び三婚を含んで――生ずるならば、死亡による世代の推移に比較してこれらの世代の継起が早く繰返されれば繰返されるほど、増加はいよいよ急速となることは、明かである。
 これら三原因のいずれか一つに有利な変化が起れば、他の二つがそのままでも、明かに人口に対し影響が生じ、そして記録簿における死亡以上に出ずる出生の超過を増大せしめるであろう。はじめの二原因に関しては、そのいずれの増加も、出生の死亡に対する比率に対しては同一の影響を及ぼすけれども、しかし結婚の出生に対する比率に及ぼす影響はその方向が反対であろう。結婚の出産性が大であれば大であるほど、出生の結婚に対する比率は大となり、結婚まで生存する産児の数が大であれば大であるほど、出生の結婚に対する比率は小となるであろう1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。従って、もし一定の限度内で、結婚の出産性と結婚まで生存する産児の数とが同時に増加するならば、記録簿における出生の結婚に対する比率は前と少しも変らないこともあろう。そしてこれあるが故に、各国の記録簿は、増加率が極めて異るにもかかわらず、しばしば出生と結婚に関しては同一の結果を示すのである。
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 1)[#「1)」は縦中横] プライス博士は自らこの点を力説していながら(vol. i. p. 270. 4th edit.)、しかも健康性と多産性とはおそらくほとんど不可分の増加原因であると云い(p. 275.)、その証拠として出生及び結婚の記録簿を引証している。しかし、これらの原因は疑いもなく並存することもあろうが、しかしもしプライス博士の推理が正しいとするならば、かかる並存はおそらく出生及び結婚の表からは推論され得ないのである。実際、彼が結婚の出産性を証示するものとして記録簿を引証しているスウェーデンとフランスとの二国は、決して著しく健康ではないことは、人の知るところである。そして彼が言及している都市の記録簿は、彼れの所期の如く、出産性の欠乏を示しはしようが、しかも彼れの前の推理によれば、同時に健康性の大なることを示すものであり、従って両者の存在しないことの証拠として持ち出さるべきものではない。プライス博士が確証しようとする一般的事実、すなわち地方の境遇は都市よりも健康的でもあれば多産的でもあるという事実は、なお依然として事実であろう。しかしこの事実は確かに単に出生と結婚の表からは推論し得ないものである。ヨオロッパ諸国に関しては、最も出産性の低いものが最も健康性が高く、最も健康性の低いものが最も出産性が高いことが、一般に見出されるであろう。不健康な国で結婚年齢のより[#「より」に傍点]若いことが、この事実の明瞭な理由である。
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 出生の結婚に対する比率は、実際、増加率を断定すべき何の基準をもなすものではない。一国の人口は五対一の比率の場合にも停止的のことも減少していることもあろうし、また四対一の比率の場合にもある速度で増加していることもあろう。しかし増加率が与えられるならば、それが他の源泉から得られたものであっても、出生の結婚に対する比率は記録簿の上で大きいよりも小さい方が明かに望ましいのであるが、けだしこの比率が小であれば小であるほど、結婚まで生存する産児の比率は大でなければならず、また云うまでもなくその国はそれだけ健康的でなければならぬからである。
 クロオメは1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、一国の結婚が四以下の出生を生ずるときには、人口が極めて危殆《きたい》な状態にある、と云い、そして結婚の出産性を年出生の結婚に対する比率によって測定している。もしこの説が正しいならば、ヨオロッパの多くの国では、記録簿における出生の結婚に対する比率は四対一以上であるよりはむしろ以下であるから、多くの国の人口は危殆な状態にあることになる。この比率をして結婚の出産性の正しい表現たらしめるためには、記録簿上のこの比率をいかに修正しなければならぬかは、既に述べたところである。そしてもし産児の多数が結婚まで生存し、また結婚年齢が平均寿命よりも著しく若いとするならば、記録簿におけるかかる比率は決して急速な増加と矛盾するものではない。ロシアでは、出生の結婚に対する比率は四対一以下であることがわかっているが、しかもその人口は他のヨオロッパのいかなる国民よりも急速に増加している。英蘭《イングランド》では、人口はフランスよりも急速に増加しているが、しかも英蘭《イングランド》では、脱漏を斟酌すれば、出生の結婚に対する比率は四対一であり、フランスでは四・五分の四対一である。アメリカに生じたような急速な増加を生ぜしめるためには、実際、あらゆる増加原因を発揮せしめる必要があろう。そしてもし結婚の出産性が非常に大であるならば、出生の結婚に対する比率は確かに四対一以上であろう。しかし、全生殖力が発揮される余地のない一切の通常の場合においては、現実の増加が、大きな死亡率を伴う大きな程度の出産性よりも、成人となり結婚するまで生存する産児の比率を大ならしめる幼少年期の優秀な健康状態により、生ずる方が、確かにより[#「より」に傍点]よいことである。従って一切の通常の場合においては、四または四以下対一という出生の結婚に対する比率は、好ましからぬ徴候とは看做すことは出来ない。
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 1)[#「1)」は縦中横] 〔Ueber die Bevo:lkerung der Europa:is. Staat. p. 91.〕
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 産児の大部分が結婚まで生存するからといって、その国の結婚は早婚であるとか、または人口に対する予防的妨げが普及していないとかいうことには、ならないということを、注意しなければならぬ。ノルウェイやスイスの如き国では、産児の半数が四〇歳以上まで生存するのであるが、これらの国では、半数よりもやや以上が結婚まで生存するけれども、二〇歳ないし四〇歳のものの多数が独身状態にあることは明かであり、そして予防的妨げは著しく行われているように思われる。英蘭《イングランド》ではおそらく産児の半数が三五歳以上まで生存し1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、そして半数よりやや以上が結婚まで生存するけれども、予防的妨げが、ノルウェイやスイスと同程度ではないにしても、(吾々の知る如くに)著しく行われていることであろう。
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 1)[#「1)」は縦中横] 現在(一八二五年)及び過去十年間、または二十年間ですら、産児の半数は四五歳まで生存すると信ずべき理由がある。(訳註――この註は第六版のみに現わる。)
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 予防的妨げの尺度は、おそらく、年出生の総人口に対する比率の小なることである。年結婚の人口に対する比率は、事情を同うする諸国においてのみは正しい基準たりうるにすぎず、結婚の出産性または青春期以下の人口の比率及び人口増加率に差異のある場合には、不正確である。もし一国の全結婚が数の多少は別として、早婚であり、従って多産的であるならば、同一の出生率を生ずるためには、結婚率がより[#「より」に傍点]小とならなければならない。しからざれば、同一の結婚をもってより[#「より」に傍点]大なる出生率をもたらすであろう。この後者の場合はフランスに当てはめ得るように思われるが、この国では出生も死亡もスウェーデンより大きいが、しかし結婚率はほとんど同一かまたはむしろ以下なのである。そしてこの二つの国を比較した場合に、その国の人口の中《うち》、他方よりも遥かに大きな部分が青春期以下である時には、年結婚の総人口に対する一般的
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