des Partes, etc., c. ii. p. 13, 14.
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 しかもなお、右の推理が十分の根拠をもつとしても、フランスは革命によってただ一人の出生さえ失っていないかもしれぬ。フランスは、それが失ったかもしれぬ二百五十万の個人を哀惜する最も正当な理由があろうが、しかしその子孫についてはかかる理由は何もない。けだしもしこれらの個人が国に残っていたならば、現在フランスに生存しているところの、他の両親から生れた同数の子供は、生れることはなかったであろうからである。もし、統治の最良なヨオロッパの国でも、吾々が、出生を阻まれた子供を哀惜しなければならぬとすれば、吾々は絶えず悲しんでばかりいなければならぬことになる。
 あらゆる国において、死亡による空席を出生が不断に充たす傾向があるが、しかしこれは道徳的見地から云って、云われない人命の犠牲に対する最小の言訳をも与えるものであり得ないことは、明かである。この場合に犯される積極的な罪悪、すなわち現在の住民にもたらされる苦痛、窮乏、広汎な荒廃と悲哀とは、人口の数の上での傷痍が急速に恢復されるということで、決して相殺され得るものではない。吾々は、最も差迫った必要に迫られた時の外には、人生の快楽の絶頂にある者の生命を同数の無力な幼児と交換する何らの政治的な権利も道徳的な権利も、有ち得ないのである。
 フランスの人口は数的には革命によって何らの損害も蒙らなかったかもしれないが、もしその損失が少しでもこの問題に関する吾々の推測に等しいなら、フランスの軍事力は損害を受けないはずはない、ということも述べておかなければならぬ。その人口は今日、通常よりも遥かに大きな比率の婦人と子供から成っているに相違なく、未婚者または兵役年齢の者の一団は著しく減少しているに違いない。実際これは、既に届いている各知事の報告によって事実なることが知れているのである。
 男子の涸渇が一国の人口に本質的な影響を及ぼし始める時点は、本来の未婚者の一団が消尽し、男子に対する年々の需要が、年々青春期に達する男子の中《うち》通常比率の年結婚を成立せしめるに必要な数以上に出ずる超過よりも、大となる時であることが、わかったのであった。フランスはおそらく、戦争終結当時、この時点からいくらか隔っていた。しかし婦人と子供の比率が増大し、兵役年齢の男子が著しく減少している、人口の現状では、フランスは、その人口の源泉を破壊することなくしては、一時行ったと同じ壮図《そうと》を実行することは出来ないであろう。
 あらゆる時代に、フランスの兵役年齢の男子の数は、結婚せんとする傾向と1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、子供の数が多いこととのために、総人口に対して小さな比率しか有たなかった。ネッケルは、この事情に特に留意している。彼は、農民がはなはだしく窮乏するとその結果は三、四歳以下の小児の恐るべき死亡率が生ずるものであり、その結果として、小児の数は成人の数に比較して常に過大となる、と云っている。彼はまた正当にも、この場合の百万人は、人民がそれほど窮乏していない国の同数のものと、同一の軍事力も同一の労働能力もあらわすものではない、と云っている2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。
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 1)[#「1)」は縦中横] フランスにおける結婚の人口に対する比率は、ネッケルによれば、一対一一三である。tom. i. c. ix. p. 255.
 2)[#「2)」は縦中横] De l'Administration des Finances, tom. i. c. ix. p. 263.
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 スイスは、革命前には、同時代のフランスよりも、遥かにより[#「より」に傍点]大なる比率の人口を、戦場に送り、または成人に適した労働に雇傭することが、出来たことであろう1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。
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 1)[#「1)」は縦中横] 本書を書いて後に、私は『県会議事要録』〔Analyse des Proce`s Verbaux des Conseils Ge'ne'raux de De'partement.〕 を見る機会を得たが、これは第八年のフランスの国内状態に関する極めて詳細なかつはなはだ興味ある記事を載せている。人口に関しては、報告の載っている六九県のうち、一六県では人口は増加し、四二県では減少し、九県では停止的であるとされており、また二県では壮年人口は減少したと云われているが、しかし数の上では増減がない。しかしながら、これらの報告の大部分は現実の人口実測に基づくものではないように思われる。そしてかかる実証的資料なくしては、人口の問題に関する一般の世論、並びに兵役年齢の男子が著しく減少したという一般承認の事実によって、人々は当然に、人口は全体として減少したに違いない、と考えるに至るであろう。単に外見から判断しても、百人の成人に代えるに百人の子供をもってすることは、確かに、人口に関して同一の印象を与えないであろう。従って、第九年の人口実測が完了した時に、人口が全体として減少しなかったことがわかったとしても、私は少しも驚かないであろう。報告のあるものでは、『人民の間に拡がった一般的安易』及び『大土地所有の分割』が増加の原因であると述べられており、またほとんど全般に亙って、『早婚』及び『徴兵令を忌避するために増加した結婚』が特に指摘されている。
 農業状態に関しては、七八の報告のうち、六は進歩、一〇は退歩したと云い、七〇は一般に奨励を要すると云い、三二は『開拓の増加』を喞《かこ》ち、一二は『開拓の奨励』を要求している。報告の一つは、『最近莫大な土地が開墾され、農業に従事する者をもってしては処理し得ないほど仕事が殖《ふ》えた』と述べており、また他のものは、『久しい以前から行われる尨大な開拓』に論及しているが、これは最初のうちは成功と思われたが、まもなく耕作面積を減らして集約度を高める方が有利であることがわかったものである。報告の多くは穀物の低廉なことと、これに十分な売口のないことを指摘しており、そして『共有地』の分割に関する問題を論じては、『この分割は、これを開拓することによって、疑いもなく事実産物を増加したが、しかし他方において、放牧場は存在しなくなり、家畜はおそらく減少した。』と云っている。従って全体として私は、この国の農業は大きな純生産物を挙げるように適切な処理を受けたとは思われないけれども、総生産物は革命中に少しも減少しなかったのであり、そしてかくも多くの新地を開墾しようとする企図は労働者の不足を更にいっそうはなはだしからしめた、と推論したい。そしてもしこの国の食物が革命中に減少しなかったことが認められるならば、極めて広く指摘されている労働価格の騰貴は、社会の労働階級の間に極めて有力な人口増加の奨励として作用したに違いない。
 地租すなわち 〔contribution foncie`re〕 はあまねく不平の種となっている。実際それは極度の重税であり、その負担は非常に不公平であるように思われる。それは純生産物のわずか五分の一を徴収する意図のものであったが、しかし農業が一般に改良されておらず、小地主の数が多く、なかんずく投下資本に比して過大の土地を耕作しようと企てるので、それはしばしば四分の一、三分の一、はなはだしきは二分の一にすら達する。所有地が余りにも細分されて、農場で家族を養うためにはその地代と利潤とを合せなければならぬような場合には、地租は著しく耕作を阻害しなければならぬ、もっともしばしば英蘭《イングランド》で見られる如くに、農場が大きな場合には、この種の結果はほとんどまたは全く伴わないのであるが。報告に述べてある農業に対する阻害の中には、新相続法による土地の過度の細分が指摘されている。大きな所領の若干の分割はおそらく農業の改良に貢献したであろう。しかしここに述べたような性質の細分は確かに反対の結果をもたらし、ことになかんずく純生産物を減少する傾向をもち、地租をして苛酷でもあればまた不生産的でもあるものたらしめるであろう。もし英蘭《イングランド》の一切の土地が一年に二〇|磅《ポンド》をもたらす農場に分割されるならば、吾々はおそらく現在よりも人口が多くなるであろうが、しかし一国民としては極度に貧しくなり、そして現在と同一数の工業を維持することも同一の租税を徴収することも、全く不可能になるであろう。すべての県は、〔contribution foncie`re〕 の低減をもって、農業の繁栄にとり絶対に必要なものと要求している。
 養育院や慈善的施設の状態、乞食の流行や捨児の死亡率については、ほとんどあらゆる報告に最も歎かわしい光景が描かれており、このことから最初は吾々は、一切の下層階級のもの一般の間では貧困と窮乏の程度が増大したものと推論したくなる。しかしながら、養育院や慈善的施設は、革命の間、その収入のほとんど全部を失ったように思われる。そして外に頼るところのない多数のものからこのように突然生計の途を奪ったので、このことは、周知の都市における工業の失敗と、私生児の著しい増加と相俟って、報告に述べられているような一切の悲惨な外見を、周知の労働の価格騰貴と穀物の比較的低廉とから必然的に生ずる農業労働者一般の境遇の改善という大事実と衝突することなく、生ぜしめ得たのであり、そして一国の有効人口が主として供給されるのはこの農業部分からなのである。もし英蘭《イングランド》の貧民税が突然廃止されるならば、疑いもなく従来それによって養われていたものの間には最も錯雑した災厄が生ずるであろうが、しかし私は、社会の労働部分一般の境遇も、この国の人口も、これによって損害を蒙るとは、考えないのである。フランスにおける私生児の比率は、全出生の四七分の一から一一分の一へというような異常な増加を示したのであるから、より[#「より」に傍点]多くのものが養育院に遺棄され、またこれらのうち通例以上のものが死亡することは明かであるが、しかも、通例の数以上のものが家庭で育てられ、そしてかかる恐るべき収容所の死亡を免れ得たであろう。養育院の基金が乏しいことから見て、適当な保姆は傭うことが出来ず、多数の子供が絶対的飢餓で死亡したことと思われる。養育院のあるものはついに新たな収容を拒避したが、これは極めて当然なことである。
 報告は、全体として、フランスの国内状態に対して好ましい光景を示していない。しかし若干は疑いもなくこれら報告の性質に帰せらるべきものである。けだしこの報告は、各県の状態を説明した記述と、政府から援助または救済を得る目的をもつ特別の要求とから、成るものであるから、それがむしろ好ましくない方面の陳述に偏することは当然予期せらるべきことである。問題が新税の賦課や旧税の免除にある時には、人々は一般にその貧困を訴えるであろう。実際租税の問題については、フランス政府はいささか当惑しなければならぬように思われる。けだしそれは極めて適切にも、県会に勧奨して、漠然たる不平に耳を傾けることなく、特定の不平を述べて特定の救治策を提議し、特に他の租税を推奨することなくして一租税の廃止を要求することのないようにと云ったのであるが、しかし私には、すべての租税が非難されており、しかもこれに代るものを何ら提議することなくして一般的に非難されている場合が、最も多いように思われる。地租、動産税、入市税、関税は、すべてはげしい不平の種である。そして私の注目を惹いた唯一のこれに代る新税は狩猟税であるが、狩猟は現在フランスではほとんど消滅しているから、一切の残余を埋合すに足る収入を生ずるものとは期待し得ない。この著作は全体として極めて興味があり、そして各県の状態を知りその改善のためのあらゆる観察と提案とに耳を傾けようという政府の希望を示すものとして、統治者の大きな名誉に価するものである。それはしばらくの間は公刊されたが、
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