lここの句に『最近一世紀の間』なる語が挿入されたのは第六版であり、また『平均比率』の語は第二―四版では『最高平均比率』とあった。
〔訳註2〕この前の二パラグラフと、このパラグラフのここまでとは、第二版以後のものであり、第一版ではこれに代えて次の如くあった、――
『ある国における五年または十年間の出生の埋葬に対する比率は、従って、その真の人口増加を判断するには極めて不適当な基準であることが、わかるであろう。この比率は確かに、かかる五年または十年間の増加率を示すものである。しかし吾々はこれからは、その前の二十年間の増加|如何《いかん》、またはその後の二十年間の増加|如何《いかん》は、推論し得ない。プライス博士は、スウェーデン、ノルウェイ、ロシア、及びナポリ王国は急速の増加しつつある、と云っている。しかし彼が与えている記録簿の抜萃は、この事実を確証するに足る範囲に亙る期間のものではない。しかしながら、スウェーデン、ノルウェイ、及びロシアは、プライス博士が採っている短期の出生の埋葬に対する比率が示す如き率ではないとしても1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、たしかに人口が実際増加しつつあるらしい。一七七七年に終る五箇年間に、ナポリ王国における出生の埋葬に対する比率は、一四四対一〇〇であった。しかしこの比率は、百年間にこの王国がなしとげた増加よりも遥かに大きな増加を表わしている、と想像すべき理由があるのである。
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『1)[#「1)」は縦中横] See Dr. Price's Observations, 2 Vol. Postscript to the controversy on the population of England and Wales.
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『ショオト博士は、二つの期間における英蘭《イングランド》の多数の村と市場都市との記録簿を比較しているが、その第一の期間は、エリザベス女王から前世紀(訳註――十七世紀)の中頃までであり、第二の期間は前世紀終末の色々の年から現世紀の中頃までである。この抜萃の比較から見ると、前期においては出生は埋葬を一二四対一〇〇の比率で超過したが、後期ではわずかに一一一対一〇〇の比率で超過しているに過ぎない。プライス博士は、前期の記録簿は信頼出来ないと考えているが、しかしおそらくこの場合それは不正確な比率は与えていないであろう。少くとも、後期よりも前期の方が埋葬以上に出ずる出生の超過が大であると期待すべき、多数の理由がある。ある国の人口の自然的増加においては、その後期よりも初期の方が、他の事情にして等しければ1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、より[#「より」に傍点]良い土地が耕作されることであろう。そして生産物のより[#「より」に傍点]大なる比例的増加は、ほとんど常に、人口のより[#「より」に傍点]大なる比例的増加を伴うであろう。しかし、埋葬以上に出ずる出生の超過をして現世紀の中頃よりもエリザベス女王の末期において当然より[#「より」に傍点]大ならしめるべきこの大原因の外に、私は、前期において疫病《ペスト》が時々暴威を振ったのでこの比率はやや増大する傾向がなければならぬ、と考えざるを得ない。この恐るべき疾病の襲来した中間期の十年の平均を採ったとすれば、または疫病《ペスト》流行年が偶然的なりとして排除されたとすれば、記録簿は確かに、真の平均人口増加としては高きに過ぎる出生の埋葬に対する比率を与えるであろう。一六六六年の大疫病後の数年間には、おそらく通常以上の埋葬以上の出生の超過があったことであろうし、ことに英蘭《イングランド》は現在よりも革命の際(これはわずかにそれより二二年後に起ったものである)の方が人口が多かったという、プライス博士の意見が根拠あるものであれば、いっそうそう思わざるを得ない。
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『1)[#「1)」は縦中横] 私は、他の事情にして等しければ、と云うが、けだしある国の生産物の増加は、常に著しく、そこに行われる勤労の精神とこの精神の指導様式とに、依存するからである。人民の知識と習慣その他の一時的原因、なかんずくその当時の市民的自由と平等との程度は、常に、この精神を刺戟し指導するに当り大きな影響を及ぼさざるを得ないものである。
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『キング氏は、一六九三年に、ロンドンを除く大英国全体の出生の埋葬に対する比率は、一一五対一〇〇であると述べている。ショオト博士は、現世紀の中頃に、これを、ロンドンを含んで一一一対一〇〇としている。一七七四年に終る五箇年間のフランスではこの比率は一一七対一〇〇であった。もしこれらの記述が真に近いとすれば、また特定の時期にこの比率に非常に大きな変動が何もないとすれば、フランス及び英
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