ころである。そしてこの表やジュウスミルヒの他の表から見ると、一国の生産物が増加しまた労働に対する需要が増大し、ために結婚を大いに助勢するほど労働者の境遇が改善される時には、早婚の慣習は一般に継続し、ついに人口は生産物の増加以上に増加することとなり、そして疾病流行年となるのがその自然的な必然的な帰結であるように思われる。大陸の記録簿は、急速な人口増加がかくの如くして致命的な疾病によって阻止された幾多の事例を示している。そしてこの事実から推論し得ることは、生活資料は人口増加を助勢するに足るほど増加しつつあるけれども、しかし増加する人口のあらゆる要求に応ずるには、足りない国は、人口増加が平均的生産物とより[#「より」に傍点]均衡を保っている国よりも、週期的伝染病に襲われやすい、ということである。
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1)[#「1)」は縦中横] New Observ. p. 191.
〔訳註〕これと次との二パラグラフはおおむね第一版より。Cf. 1st ed., pp. 119−120.
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この反対ももちろん真実であろう。週期的疾病に襲われる国においては、それほどかかる疾病に襲われない国に通常見られるよりも、流行病の中間期における人口の増加すなわち死亡以上に出ずる出生の超過が大である。もしトルコやエジプトが前世紀の間平均人口においてほとんど停止的であるとすれば、その週期的|疫病《ペスト》の中間期において、死亡以上に出ずる出生の超過の比率が、フランスや英蘭《イングランド》の如き国よりも遥かに大きかったに違いないのである。
現在の増加率または減少率から算出した将来人口の増減の推測に信頼し得ないのは、この理由によるものである。サア・ウィリアム・ペティは、一八〇〇年にはロンドン市は五、三五九、〇〇〇の人口になろうと計算したが1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、実際は今日その五分の一もない。イートン氏は最近、今後一世紀にトルコ帝国の人口は絶滅すると予言したが2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]、これは確かに起りそうもないことである。もしアメリカが今後一五〇年間、現在と同一の比率で増加し続けるならば、その人口は支那の人口をも超過するであろう。しかし、予言は危険であるけれども、私は、五、六百年の後はともかく一五〇年ではこんな増加は起らない、とあえて云いたいのである。
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1)[#「1)」は縦中横] Political Arithmetic, p. 17.
2)[#「2)」は縦中横] Survey of the Turkish Empire, c. vii. p. 281.
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ヨオロッパは疑いもなく、現在よりも従来の方が、疫病《ペスト》や荒廃的な伝染病に多く襲われた。そしてこのことは、従前には出生の死亡に対する比率がもっと高かったという、多くの著者が述べている事実の、大きな理由をなすものであろう。けだしかかる比率を余りに短い期間からとり、そして一般に疫病《ペスト》流行年を偶発的なりとして除外するのが、常に通例となっているからである。
最近一世紀の間|英蘭《イングランド》では出生の死亡に対する平均比率(訳註1)は約一二対一〇、すなわち一二〇対一〇〇であると考え得よう。一七八〇年に終る十年間のフランスの比率は約一一五対一〇〇であった1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。これらの比率は疑いもなくこの一世紀間時期を異にするにつれて変動しているけれども、しかも吾々は、それは何らか著しい程度には変動しなかったと考うべき理由がある。従ってフランス及び英蘭《イングランド》の人口は(訳註2)、他の多くの国よりも、それぞれの国の平均生産物に均衡を保っていたことがわかる。予防的妨げの作用――戦争――大都市及び工場における暗黙のしかも確実な生命の破壊――多数貧民の狭隘な住居と不十分な食物――これらが、人口が生活資料以上に突進するのを防止しているのであり、そして一見確かに奇妙に思われる表現を用いてもよいならば、それは激しい暴威を振う伝染病が過剰なるものを破壊するという要を排除してくれるのである。もし荒廃的|疫病《ペスト》が英蘭《イングランド》で二百万、フランスで六百万を一掃したとすれば、住民がこの恐るべき衝撃から恢復した後は、出生の死亡に対する比率は両国において前世紀間の通常平均比率より遥か以上になるべきことは、疑い得ないのである(訳註3)。
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1)[#「1)」は縦中横] Necker's[#「Necker's」は底本では「Necker」] de l'Administration des Finances, tom. i. c. ix. p. 255.
〔訳註1
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