に決まっていた。そこで、
『君は宗教のこと以外に、世間の仕事を何か知っているか』
と聞いて見ると、彼は修道院において、ジョアンという世界的農学者(現在オランダの農科大学長をしている)から牧畜のことを学びましたということであった。
ちょうどその頃、私は四男の文雄を南米ブラジルにやって、そこで彼の新天地を開拓させようと考えて、文雄もこのことを喜び、南米行の予備教育を受けるために、日本力行会(故島貫氏創立)の海外学校に在学中であった。そこで私が考えるのに、海外に移民する日本人が牧畜の知識を持っておらぬのが最大の欠点で、これがあれば彼地での発展に大いに役立つであろうと思われた。すなわち当時の力行会長永田氏にこのことを話し、乳牛持参の牧畜教師を雇ってくれますかというと、永田氏も大いに歓迎するということであった。私は早速七百五十円の乳牛一頭を買い、校庭に牧舎とウルスス君の住宅とを新築して、彼を学校に送った。
ところが僅か二ヶ月で、海外学校にウルスス君を中心として事件が起った。何しろ羅馬法王と争うほどの熱血漢ウルススのことで、たちまち血気の学生の共鳴するところとなり、一にも和田、二にも和田で学
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