れに対してありのままに答えました。箱車二台、従業員は主人を加えて五人、そして売上げです。この売上高が問題で、それによる税務署の査定通り税金を払ったのでは、小店は立ち行かないのでした。
それでどこの店でもたいてい売上高を実際より下げて届け、税務署はその届け出の額に何程かの推定を加えて、税額を定めるのでありました。私にはどうしてもその下げていうことが出来ず、ありのままを言ってしまったのでしたから、当時の中村屋の店としては、分不相応な税金を納めねばならぬことになりました。これは何と申しても私一生の失敗であると、いまでも主人の前に頭が上がらないのであります。
よく売れるといっても知れたもので、一日の売上げ小売りが十円に達した日には、西洋料理と称して店員には一皿[#「一皿」は底本では「一血」]八銭のフライを祝ってやる定めにしていたことによっても、およその様子は解って頂けると思います。ただでさえ戦後は税金が上がりますのに、こんなことで中村屋は立ち行く筈もなく、私のあやまちと申しますか、心弱さと申しますか、とにかく自分ゆえこんなことになったと思い、一倍苦しうございました。
『仕方がない、言ってし
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