下げ]
 ええわ、子供の割にはよう喰ひよるさかい、こいつも一人前に見といてやろ、さうするとコーツとなあ。……
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 次第に左の手の指を折りたるを、妻の面前にさし出して、それと七分三分にその顔を眺め、
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 そやろがな、これで十四人じや、そうするとどれだけになる知らん。
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 得意らしくうつむきて勘定にかかり、たちまちに胸算は出来たりと見えて、しきりに自ら感歎し、
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 えらいものなア。ちよつとこれで一遍に四合六勺あまりは違ふさかいな。
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 振り向きて肩後《うしろ》に扣《ひか》へし張箪笥の上より、庄太郎の為には、六韜三略虎の巻たる算盤、うやうやしく取上げて、膝の上に置き、上の桁をカラカラツと一文字に弾きて、エヘント咳払ひ、ちよつとこれを下に置きて、あたかも説明委員といふ見得になり、
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 まあそれざつと三杯を一合と見いな、もつとも家の茶碗は小さうしてあるけど、みんながてんこ[#「てんこ」に傍点]盛りに盛りよるさかいな、そこで、
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とまた算
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