でも搆はせんわ、一切断るといふ事を忘れまいぞー誰はええ、彼はええといふ事になると、ついものがややこし[#「ややこし」に傍点]なつて来てうちの規則が破れるさかい。何のお前人の女房といふものは、亭主の気にさへ入ればそれでよいのじや。よその人の気に入ると、えて間違ひが出来るさかいな。
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少し声を潜めて、
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トいふも実はわしのお父さんがそれでしくじつて[#「しくじつて」に傍点]はるのや。
ウ何ぢや、親類の人だけは受けが悪なると困る。ハ……分らぬ事をいふ奴ちや。わしとこの親類に誰ぞ、ヘイ上げまようというて、金を持て来るものがあるかい――、あらしよまいがな。それ見イな、何が困る事があろぞひ。まだしも無心をいはぬだけが取得と思つてる位の先ばかりじやないか、それを何心配する事があろぞひ。そんな奴でもちよつと来て見イな、茶の一杯も振舞はんならんし、畳も自然損じるといふもんぢや。そこへ気がつかぬとは、さてさて世帯気のないこツちや。いつもお前の心配は、とかく方角が違うて困る……
「なるほど分りました。」
分つたか、分つたらそれでよい。それからまた飯時のこ
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