と打明けむは、いかに叔父甥の間柄とはいへ、夫の恥辱《はぢ》となる事と思へばそれもいはれず。ただ責めを己れ一身に帰して、
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 なるほど承つてみますれば、そんなものでござりまするか存じませぬが、何分にも今晩のうちの人の立腹は尋常《ひととほり》の事ではござりませぬ。決して決して喧嘩といふではございませぬ、何事も不調法なる私うちの人の立腹も無理はござりませぬが、それはどこまでも私があやまりますさかい、どうぞ叔父さん御慈悲に御挨拶下されまして。
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と声を顫わせ頼むけしき、容易の事とも思はれねば、叔父もやうやく納得して、
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 それでは私が送つてやろ、おおもう十二時は過ぎたのや。家で一晩位泊めてもよいのやけど、なんぼ甥の嫁でも人の女房、断りなしに泊めても悪かろ、そんなら今から。
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 煙草入腰に※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]して立上るに、お糸もやうやく力を得て、どうぞこれで済めばよいがと、危ぶみながら随ひ行きぬ。
 さて叔父のおとなひに、一も二もなく門の戸は開かれたれど
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