に。
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 庄太郎聞き付けてくわつ[#「くわつ」に傍点]と怒りを移し、
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 これ長吉ちよつと来い。
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 我が前へ坐らせて、
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 お前は今何をいうてたのぢや。いつ行こと行こまいと、こちの勝手じや、お前の構ひにはならぬこツちや。そんな事いうてる手間で隣家へ行て、もう何時でござりますると聞いて来い。ついでに大阪へ行く汽車はいつ出ますと、それも忘れまいぞ。
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 叱り飛ばして出しやり、もと柱時計の掛けありし鴨居の方を見て独言のやうに、
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 ああやはり時計がないと不自由ななア、要らぬものは売つて金にしとく方が、利がついてよいと思うて、何やかや売つた時に一所に売つてしまうたが、こんな時にはやつぱり不自由なわい。でも隣家は内よりもしんしよ[#「しんしよ」に傍点]が悪い僻に、生意気に時計を掛けてよるさかい、聞きにさへやれば、内に在るのも同じこツちや。あほな奴なア、七八円の金を寐さしといて、人の役に立ててよる。
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 これにも女房無言なれば、また不機
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