さんはそんなに何もしないかい。そりやもうお前も十五だし、女の子の事でもあるから、何でも仕習つておかないと、先へよつてからお前が困ると思つて、お飯《まんま》も洗濯も、私がする方が早いのだけれど、めんどうを見てお前にさせてやるのは、みんなお前の為を思ふから※[#小書き片仮名ン、30−15]だ。お父さんの看病だつてもその通り、とてもお父さんはよくならない事は極まつてるし、もう長い事はあるまいと思ふから、亡くなつた後にお前が残念がらないやうにと思つて、一つでもお前にさすやうにしてやるんだアネ。それをそうとも思はないで、いかに生さぬ中の継子根性とはいへ、私ばかしひどく遣ふなんて、近所へ触れ廻すといふ事があるものかネ。ほんとにお前は太い子だよ。おッ母さんの前てばかし、ホイホイいつて、お父さんの事でも何でも私がするから。おッ母さんは搆わないでおいでなんて、お上手を遣つてサ、蔭へ廻つて讒訴《ざんそ》するなんッてほんとうに呆れたものだよ。これがおッ母さんだつて、自分が悪くいはれないやうにと思つて、お前の為を思はないなら、お前には何もさせずに、それこそチヤンと遊ばせておいて、おッ母さんが何もかもするわネ。
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