へむとせしに、子供ながらも空腹に眼敏き松之介、これに睡りを醒まされて、薄暗き燈に父を認め、
[#ここから1字下げ]
おツかア、ちやんはもう帰つたね。おらアお米を買つて来やうや。
[#ここで字下げ終わり]
睡き眼をこすりながら、むくむくと起き出づる、子の可愛さは忘れねど、腹立つ際とて、夫への面あて、わざともぎだう[#「もぎだう」に傍点]に突遣りて、
[#ここから1字下げ]
おツかアは知らないよ、ちやんにおねだりな。
でもちやんは寐てるぢやないか。
いいから起こしておやりよ、耳のはた[#「はた」に傍点]で大きな声をするんだよ。
[#ここで字下げ終わり]
唆《そその》かされて正直に、父のからだに取付きつ、
[#ここから1字下げ]
ちやんやちやんやお銭《あし》をおくれ、お米を買つて来るんだからヨー。
[#ここで字下げ終わり]
幾度か呼べど答へもなき出して、再び母の袖にすがるをさすがにも振切りかねて、我知らず松之介を抱き寄せ、
[#ここから1字下げ]
仕方がないからもう一寐入しなよ、今に夜が明けたら、おツかアがどうにかしてやるよ。いい児だ寐なよ。
[#ここで字下げ終わり]
と背
前へ
次へ
全21ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
清水 紫琴 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング