ハハハ
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うつつたわいもなきままに、上り口といふも一間きりの、框へバタリと倒れたるまま、はや正躰なき様子に、女房はいとどぢれ込みて、ヌツと起き出で、その枕を蹴らぬばかり頭の際に突立ちて足踏み鳴らし、
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これサお前そんなところへ寐ツちまツて、どうする気なんだえ。しつかりおしよ、今に落ツこちらアな。そして戸はどうしたんだえ、明けツ放しぢやないか。
ムニヤムニヤムニヤ。
真実に仕方がないねえ、まるつきり夢中なんだもの。
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ふしやうぶしやうに、庭に下りて、外れし戸をやうやくに建て合はせ、竿竹にてともかくも支へ来り、上りかけにわざと強く夫の足に突当たれば、
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アイタアイタ痛てえや、何をするんだ。
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気味よしといはねばかり、女房は冷やかに笑ひて、
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怪我だわな。こんな処へ足が出てやうとは思はないからね。
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少しくきツとなりて、
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何かえお前、今まで仕事先に居たのかえ。
うるせえや、知れた事を聞く
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