かくの興も醒めて、翌朝また飲直しと出掛けなくツちやアなんねえのだ、ヤツコラマカセ
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と戸を飛越えて、
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南無八幡ぢやアなかつた、山の神大明神、この酔心地醒まさせたまふなかハハハハ
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興に乗りて柏手一ツ二ツ叩くを、前刻より寐た振りして聞きゐたる女房、堪へかねてや、かんばり[#「かんばり」に傍点]たる声張上げ、
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何だよお前今頃に帰つて来て、何を面白さうに独りで饒舌《しやべつ》てるんだ。もう疾《と》くに最終《しまい》汽車は通つてしまつたよ。早く這入つておしまひな。馬鹿馬鹿しい、近所合壁へも聞こえるや。
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小言ききながら手暴く枕もとのかんてら[#「かんてら」に傍点]ひきよせて、マツチも四五本気短く折り捨てたる末、やうやくに火を移せしを見れば、垢にこそ染みたれ、この家には惜しきほどの女房なり。
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いや有難てえや、早く這入れとは、神武以来の御深切だ。実はかうなんだ、あまり閾《しきい》が高えもんだから、それでつい躓いたのよ。ぢやア真平御免なさいやしかハ
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