うは申しますものの、次の瞬間には、
(いや、確かに……)
と、こう思いまして、さて、われと自分の頭を、大きく振り、
(思うまい、思うまい、早く忘れてしまいましょう)
と、独白《ひとりごと》していたのでございます。
昔から、よく、一度あることは二度あるとか申しますが、私の場合では、一度ならず、二度三度と、思いもかけぬ出来ごとがつづいていたのでございました。
この第二の出来ごとと申しますのは、お部屋をお掃除いたしておりますとき、片隅から、小さな石のはいった指差が出て来たことでございました。いつの頃から、そうしたところに、ころがり込んでいましたものやら、見ると、私のものではございません。もしかすると、お母さんがもっていられるものでもあろう、と、かように考えまして、おたずねいたしましたが、そうでもございません。
「お子供衆のうちの、どなたかが落されたのではないのかい」
お母さんは、こんなにも申されましたが、そのお部屋は、私の居間でございますので、そうしたところまで、お弟子さんがはいって来られる筈もございません。それに、見た目にも、お子供衆のお持ちになるものでもございません。私は不思
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