罪の行われました当時、千代とわたくしは、あの湯の町にいたのに相違ございません、私たちを監視なされていたお役人さまがご証明くださるでございましょう――と、いったことがいい得る訳でございました。
お千代さまのお仕事が、難なく運んでおりますれば、ああした手違いも起こらなかったでございましょう。が、もくろんだお仕事に失敗なされましたことと、その報告のため、私たちの宿に姿をお見せになったことが、すべてに破綻《はたん》をきたしたのでございましょう。よい頃を見はからって、私とお千代さまを入れかえるために、二組をおつくりになり、その一つをわたくしに下さった、あの立派な衣裳も、結果は、ただ、私を驚かせるに役立つにすぎないのでございます――わたくしの、夜の静寂《しじま》を破った叫び声、それが、すべての終りであったのでございました。かけつけられた、お上の方――あの、お庭そうじの男衆に姿をやつしていられました警察の方も、初めのうちは、さぞ、
常※[#歌記号、1−3−28]こちらにもおくみさん。こちらにもお組さん。こりゃまあ、どうじゃ。
という唄の文句にございますように、仰天なさったことでございましょう。そ
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