包みを二つ出されたのでございました。私は、おひざ付き、と申された紙包みは、有難く頂いたのでございますが、も一つの方は、
「連中さんと申しましても、実は、お子供衆ばかりでございますから、皆様に一杯さし上げる訳にも参りませぬ」
 と微笑みながら、ご辞退いたしますと、この方も、お上品に、お笑いになりまして、
「なる程、お子供衆でございましたら、ご酒《しゅ》を上がって頂く訳にも参りますまい。では、何か、お菓子でも買って、おあげ下さいませ」
 と、仰有《おっしゃ》ったのでございました。

     三

 この方が、お稽古に来られる様になりましてから、二週間目のことでございました。もう、その頃は、春雨と、御所車を上がっていられたのでございますが、
「実は、近い内に、どこかの温泉へ、保養がてら、一、二週間ほど行きたいと思っているのでございますが、どうも、一人で行くのは話し相手がなく、淋しいもので……」
 と、こう、仰有るのでございます。そして、
「……若《も》し、お師匠さまのご都合がおよろしい様でございましたらお供をさせて頂きたいと存じます」
 と、こんなに、申されたのでございました。――師匠をい
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