と、考えるべき幾つもの個所があるでございましょう。言葉をかえて、申しますと、
(い)何かの機械の応用、
(ろ)あり得べき迷信的な力の利用、
(は)動物の使用、
と、いうような、間接の殺人方法が考えられるでございましょう。そうすれば、はたして、
(い)のように、機械の力を応用して、楽屋に残された撥を、造りものの鐘の内部に運び、時間をはかって、中の人物に投げつける――と、いうようなことをしたのでございましょうか。そうしたことが可能でございましょうか。
(ろ)のように、迷信的な力を利用して、あのようなことが出来るでございましょうか。……この何れにも、何となく、不合理に感ぜられるところがございましょう。しかし、
(は)の、動物の使用――と、いうことに考え及びますとき、私は愕然とし、思わず、五体の緊張するを憶えたのでございます。しかし、それは、犯人が動物を使用して、計画した殺人事件、と考えついたからではございませぬ。いつか師匠から承りました、岩井半四郎が、駒下駄を投げつけて殺したという、小猿のことを思い出したからでございます。その時、親猿は、悲しげに鳴きさけびながら、怒の形相物凄く、半四郎を、
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