ざいます」

 これで、まあ、容疑者の一と通りの訊問は終ったのでございますが、警察の方は、最初、このお三人とも、同じほどに、疑いの目をもって見ていられた様でございました。即ち、
 光子さんは生きている被害者を最後に見た人として、
 菓子屋の幸吉さんは、被害者の死体発見人として、そして、
 小母さんは、被害者の死によって利益を受ける唯一の人物として、
 だそうで御座います。ところが間もなく、光子さんと小母さんに対する嫌疑は、全く晴れた様でございました。と申しますのは、殺人方法なのでございますが、それは素手で行った絞殺でございまして、何んでも両手の親指を被害者の咽喉部にあて、四指を頸の後に廻して、そのまま締めつけているのだそうでございまして、こうしたことが光子さんや小母さんの様な、女の手で出来そうになく、それに咽喉部に残された親指の跡と、中指、食指等によってなされたらしい、後頸部の爪跡、との間隔を調べた結果、加害者は男に相違ない事が証明されたのでございます。こう云った訳で、小母さんと光子さんの嫌疑は全く晴れたのでございますが、同時に、死体発見者である幸吉さんこそ、真犯人に相違ない、と考えら
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