ながうた勧進帳
(稽古屋殺人事件)
酒井嘉七

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)杵屋花吉《きねやはなきち》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)青|簾《すだれ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#歌記号、1−3−28]
−−

        一

 師匠の名は杵屋花吉《きねやはなきち》と申されました。年は二十三、まだ独身でございました。何んでも、七つか、八つの時から、長唄のお稽古を始められたのだそうでございまして、十七の春には、もう、立派な名取さんであった、というのでございますから、聡明なお方には、違いなかったでございましょう。
 しかし、それにいたしましても、あの傍の見る目もいじらしい程な、お母さんのきついお仕付けがございませんでしたならああも早くから、お師匠さんにはなれなかったに相違ございません。お母さんにしてみますれば、何んでも一人前の師匠にしてやりたいと思う、親心からのお仕付けに違いなかったのではございましょうが世間の口
次へ
全28ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
酒井 嘉七 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング