相違ないことを知ると、ようやく安心した刑事は言葉忙しく言い出した。
『至急、十人ばかり人を出して下さい。』
『よし!』
『あなたもどうか御一緒に!』
『承知した。どこだ?』
『例の家の、階下の部屋に。しかしお出で下さる時には庭の門まで迎えに出ます。』
『わかった! 自動車だろうね? もちろん。』
『はい、十歩ばかり手前で自動車を留めて、口笛を吹いていただけば、すぐ門を開けます‥‥そっと吹いて下さい‥‥家の者に聞えないように。』

          五

 捜索課長は主任刑事の請求通り、直ちに出張の命令を下した。
 ガニマール刑事は真夜中少し過ぎた頃、家の燈がすっかり消されて、真暗になったのを見計って階下を出てジュズイ氏を待っていた。
 口笛は静かに鳴った。門は音もなく開かれた。会見はひそかにかつ敏捷《びんしょう》に行われた。巡査等はすべて主任刑事の命令の下に行動した。捜索課長と主任刑事の二人は足音を忍ばせて庭を通って、家の中に入った。
『一体どうしたんだ?』
『‥‥‥‥』
『何だい、この態《ざま》は? まるで泥棒のようなじゃないか。』
『‥‥‥‥』
 捜索課長は、色々ガニマールに囁い
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