もう少し待って下さい。どうぞ本件は万事私にお任せ下さい。そして、そのうち電話をかけましたら、大至急で自動車でお出でを願います‥‥その時こそ本件の秘密の鍵を握った時ですから!』
ジュズイ氏は満足して帰った。と、それから三日経った朝、課長の許へ、一通の電報が届いた。差出人はガニマール刑事で、文句は簡短《かんたん》に、
『リイユへ行く』とあるのみであった。
『ふふむ?』ジュズイ氏は考えた。
『何だって、リイユなどへ行くのだろう?』
その日も、次の日も刑事からは何の便りもなかった。
しかしジュズイ氏は落胆しなかった。彼はガニマール刑事を充分に信頼していた。右腕と頼む刑事主任の人物をよく知っていた。ガニマールの一挙手一投足には必ず確信ある根拠があることを疑わなかった。
二日目の夜、突[#「突」は底本では「笑」]然ジュズイ氏に電話がかかって来た。
『課長? 課長ですか!』
『ああ、君は、ガニマール君?』
『はい、そうです。』
『して、その後の模様は?』
捜索課長ジュズイ氏も、ガニマール刑事も共に用心深く、相手がそれに相違ないことを知るまでは軽卒な口は利かなかった。こうして双方相求める人に
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