査にかかった。彼の緻密な頭脳は、かの大きな疑問の波を押し分け押し分け進んだ。詳細な研究は次第々々に進められた。近隣で問合せたり、家の組立を実査したり、二十度も三十度も電鈴を鳴らしてみたり、この名探偵はあらゆる能力をしぼった。
初めの計画の二週間は過ぎたが、事件は依然として五里霧中の裡《うち》にあった。刑[#「刑」は底本では「刊」]事は更に延期を願出た。捜索課長ジュズイ氏が心配してガニマール刑事の研究の実況を見に来た時には、刑事は陳列室の前に梯子をかけ、その上に上って一心に考えていた。
しかし刑事の脳中には本件の解決に関して少しの光明も見出さなかったのである。
でもその翌日ジュズイ氏が再びそこを訪れた時には、ガニマール刑事は新聞紙を前にひろげて、身も魂も打込むように思案していた。初めはジュズイ氏の問[#「問」は底本では「間」]にも答えようとはしなかったが、強いて尋ねていると、刑事は重い口を開いて、
『わかりません。全く解りません。が、ここにほんのちょっと不審に思うことがあるんです。でも、それもどうも当《あて》にはなりませんが‥‥』
『すると、君はどうするつもり?』
『課長、どうか、
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