探偵小説アルセーヌ・ルパン
EDITH AU COU DE CYGNE
モーリス・ルブラン Maurice Leblanc
婦人文化研究会訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)著《つ》いた

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)今|灯《あかり》

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(例)[#ここから1字下げ]
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          一

 今から三年前のことである。ブレスト発の列車がレンヌ駅に著《つ》いた時、その一貨車の扉の破壊されているのが見出だされた。この貨車はブレジリアの富豪スパルミエント大佐の借切ったもので、中には綴《つづ》れ錦の壁布を入れた箱がいくつも積込まれていたが、箱の一つは破られて、中の錦の一枚がなくなっていた。
 スパルミエント大佐は、夫人と一緒に同じ列車に乗っていたが、これを知ると、鉄道会社に談判を持ち込んで、一枚が盗まれても他の物の値打まで非常に下《さが》るからとて、莫大の損害賠償を請求した。
 問題は起った。警察は犯人の捜索に主力を集中した。鉄道会社でも少なからぬ懸賞金を投じてこれに声援した。
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