ているので、きものをぬぐなり、ごそごそとはいこみました。
あくる朝十時をうつまで、商人は目をさましませんでしたが、目をあいてみて、おどろいたことに、きのうまできていたぼろぎものが、さっぱりと新しいものにかわっていました。これで、たれか心のいい妖女が、この御殿のあるじなのだとおもって、窓からそとをふとのぞきますと、ゆうべの雪がきれいになくなって、花でおおわれたあずまやのある、きれいな花園になっているので、いよいよそれにそういないとおもいました。さて、もういちど、ゆうべ食事をした大広間《おおひろま》へもどってきてみますと、もうちゃんとテーブルに、朝食のしたくがしてありました。こんどはえんりょなく食事をすませると、馬はどうしたかとおもってみに行きました。すると、とちゅう、ばらの花|棚《だな》の下を通ったので、ふと、末むすめのラ・ベルにたのまれたことをおもいだして、おみやげにひと枝、ばらを折りました。とたんに、ううという、ものすごいうなりごえがしました。そして、みるからおそろしい一ぴきの怪獣《かいじゅう》が、あらわれるなり、せなかを立ててむかってきたので、商人はおびえ上がって、気がとおくなり
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