わたくし、心にもないことは申せませんもの。でも、とてもいい方だとおもっております。」
 そんなことで、だんだんうちとけて、たのしく食事がすみました。すると、とつぜん、怪獣が
「ラ・ベルちゃん、あなた、わたしのおよめになってくれますか。」と、いいだしたので、むすめは、びっくりしてしまいました。びっくりしながら、それでも一生けんめい、
「わたし、いやでございます。」とこたえました。
 怪獣は、うちじゅうふるえるほど、大きなためいきをつきました。そして、かなしそうな声で、
「お休み、ラ・ベル。」といいのこして、へやを出て行きました。むすめは、ほっとしながら、やはり、人のいい心から、きのどくにおもっていました。
 こんなふうで三月ほど立ちました。怪獣はまいばんやって来て、いっしょに夕食をたべました。するうち、むすめは、だんだん怪獣のみにくい姿かたちに馴《な》れてきて、それよりかよけい、そのやさしい、よい心を、このましくおもうようになりました。ただ、あいかわらず、およめにならないかといいつづけるのが、きのどくで、苦しくなりました。それで、あるとき、もうおよめになることはやめて、いつもお友だちでい
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