もしませんでした。父親も、ついあきらめて、「怪獣だって、つまりふびんにおもって、ラ・ベルになにもあぶないことはしないだろう。」と、おもうようになりました。
 父親がしょんぼりかえって行ったあと、ラ・ベルも、さすがに目《ま》ぶたがおもたくなりましたが、むりに涙をはらいのけて、御殿の中じゅうあるきまわってみました。するうち、ふと、一枚のとびらに、「ラ・ベルのへや」と、かいてあるのをみつけておどろきました。あわててあけてみますと、中は小ぎれいにお飾《かざ》りのできたへやで、本棚《ほんだな》があって、ハープシコードがおいてあって音楽がたのしくきこえていました。
(まあ、どうしたというのでしょう。どうせ、きょう一日でいのちをとられるにきまっているわたしのために、こんなりっぱなおへやのしたくが、どうしてしてあるのでしょうね。)
 こうおもいながら、ためしに、一冊の本をあけてみますと、金の文字で、
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「あなたがのぞんだり、いいつけたりすれば、すぐそのとおりになります。
あなたは、この御殿では、すべての上に立つ女王です。」
[#ここで字下げ終わり]
と、かいてありました。
(まあ
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