親とむすめは、わかれて大広間にはいると、こんども、こうこうとあかりがともっていて、テーブルには、ちゃんと二人前のごちそうが、よういしてありました。食事がすむと、たちまち、すさまじい物音をさせて、怪獣がへやにあらわれました。むすめが、ふるえ上がって、つっぷしていますと、怪獣はそばにやってきて、
「ここへ来たのは、自分からすすんで来たのか。」とたずねました。むすめは、消えそうな声で、「はい。」とこたえました。
「それはどうもありがとう。」と、怪獣は、うなるようにいいました。それから、父親にむかって、
「さあ、それで、お前さんには、あしたの朝すぐかえってもらおう。もうそれなり、ここへはこないでもらいたい。では、ラ・ベル、こんやはお休み。」
「お休みなさい、ラ・ベート。」と、むすめはいいました。ラ・ベートというのは、野のけものです。けものさんという代りに、このお話のなかでは、ラ・ベートとよんでおきましょう。
 そのあとで、商人は、もういちど、むすめにたのんで、自分だけのこして、このままかえってもらおうとおもって、ひと晩じゅうかきくどきました。けれど、父親に代ろうというむすめのけっしんは、びくと
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