上におきわすれたのでしょう。」と、奥がたはこたえました。
「すぐ持ってこい。」と、青ひげは、おこった声を出しました。
五六ど、あちらへ行ったり、こちらへ行ったり、まごまごしたあとで、奥がたは、しぶしぶかぎを出しました。青ひげは、かぎを受けとると、こわい目をして、じっとながめていましたが、
「このかぎの血はどうしたのだ。」といいました。
「知りません。」と、泣くような声でこたえた奥がたの顔は、死人よりも青ざめていました。
「なに、知りませんだと。」と、青ひげはいいました。「おれはよく知っているよ。おまえはよくもおもいきって、小べやの中にはいったな。えらいどきょうだ。よし、そんなにはいりたければ、あそこへはいれ、はいって、そこにいる奥さんたちのなかまになれ。」
こういわれると、奥がたは、いきなり夫《おっと》の足もとにつっぷして、いかにもまごころから、くいあらためたようすで、もうけっして、おいいつけにはそむきませんから、といって、わびました。このうえもなく美しい人の、このうえもなく悲しいすがたを見ては、岩でもとろけ出したでしょう。けれど、この青ひげの心は、岩よりも、かねよりも、かたかった
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