のでございます。
「奥さん、あなたは死ななければならない。今すぐに。」と、青ひげはいいました。
「わたくし、どうしても死ななければならないのでしたら。」と、奥がたはこたえて、目にいっぱい涙をうかべて、夫の顔を見ました。「せめてしばらく、おいのりをするあいだだけ、待ってくださいまし。」
「しかたがない、七分半だけ待ってやる。だがそれから、一|秒《びょう》もおくれることはならないぞ。」と、青ひげはいいました。
 ひとりになると、奥がたは、女のきょうだいの名を呼びました。
「アンヌねえさま(アンヌというのは、きょうだいのなまえでした。)アンヌねえさま、後生《ごしょう》です、塔《とう》のてっぺんまであがって、にいさまたちが、まだおいでにならないか見てください。にいさまたちは、きょう、たずねてくださるやくそくになっているのです。見えたら、大いそぎでくるように、合図《あいず》をしてください。」
 アンヌねえさまは、すぐ塔のてっぺんまであがって行きました。半分きちがいのようになった奥がたは、かわいそうに、しじゅう、さけびつづけていました。
「アンヌねえさま、アンヌねえさま、まだなにもこないの。」
 
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