いつまでもはてしがありませんでしたが、ご主人の奥がたは、いくらりっぱなおへやや、かざりつけを見てあるいても、じれったいばかりで、いっこうにおもしろくも楽しくもありませんでした。それというのが、夫《おっと》が出がけにきびしくいいつけておいていった、地下室のひみつの小べやというのが、しじゅう、どうも気になって気になって、ならないからでございます。
いけないというものは、とかく見たいのが、人間のくせですから、そのうちいよいよ、がまんがしきれなくなってくると、この奥《おく》がたは、もうお客にたいして、失礼《しつれい》のなんのということを、おもってはいられなくなって、ひとりそっと裏《うら》ばしごをおりて、二ども三ども、首の骨がおれたかとおもうほど、はげしく、柱や梁《はり》にぶつかりながら、むちゅうでかけ出して行きました。
でも、いよいよ小べやの戸の前に立ってみると、さすがに夫《おっと》のきびしいいいつけを、はっとおもい出しました。それにそむいたら、どんなふしあわせな目にあうかしれない、そうおもって、しばらくためらいました。でも、さそいの手が、ぐんぐんつよくひっぱるので、それをはらいきることは
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