孔子が門人に向つて大同小康の時代を述べて居る。小康時代に於ては天子が其の位を子孫に傳へ諸侯が其の位を子孫に傳へ、各々其國を國とし又人は其の勞力に依つて富を拵へるけれども、其の富を拵へた人が之を自分の物とする、夫から國と國との區別を立てゝ其間には城とか溝と云ふものを拵へて外敵を防ぎ、或は盜賊を防ぐ時代である。其の時代は治まつてはあるけれども未だ本當には治まつた完全な時代と云ふことは出來ない。完全な時代になると天子でも或は諸侯でもみな公選で仕なければならぬ。詰り前申しました天子が其の位を子孫に傳へることもなし、諸侯が其の位を子孫に傳へると云ふこともないと云ふのであります。で人間は天然の儘では可かぬ、其の天然を開發して富を作らなければならぬ、其の作つた富は自分の所有にする爲めであるかと云ふと必ずしも己れの爲めにすると云ふ事ではない、即ち働くと云ふことは人間の義務である、安逸に安んじて居つては可かぬ、それで其の勞力をすると云ふことは人間の義務であるから富でも何でも共通のものに仕なければならぬ。其の時代は詰り世界が一となつて世の中の人が皆公平になつて老人とか或は子供と云ふもの或は又鰥寡孤獨と云ふ
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