は四十仙で番号札を買い五番目の順になった。
 何小仙は指先で寶兒の脈を執ったが、爪先《つまさき》が長さ四寸にも余っていたので、彼女は内心畏敬して寶兒は助かるに違いないと思った。しかしなかなか落ちついていられないのでせわしなく訊き始めた。
「先生、うちの寶兒は何の病いでしょう」
「この子は身体の内部が焦げて塞がっている」
「構いますまいか」
「まず二服ほど飲めばなおる」
「この子は息苦しそうで小鼻が動いていますが」
「それや火が金《かね》に尅《こく》したんだ」
 何小仙は皆まで言わずに目を閉じたので、單四嫂子はその上きくのも羞《はずか》しくなった。その時何小仙の向う側に坐していた三十余りの男が一枚の処方箋を書き終り、紙の上の字を一々指して説明した。
「この最初に書いてある保嬰活命丸《ほえいかつめいがん》は賈家濟世老店《こかさいせいろうてん》より外にはありません」
 單四嫂子は処方箋を受取って歩きながら考えた。彼女は感じの鈍い女ではあるが、何家と濟世老店と自分の家は、ちょうど三角点に当っているのを知っていたので、薬を買ってから家《うち》へ帰るのが順序だと思った。そこですぐに濟世老店の方へ向
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